「俺がもし死んだらこの曲をかけてくれよ」兄はそう言った。
一年半程前、父親の四十九日法要の後の事だ。
従兄弟たちと久しぶりに会うことになり、カラオケの席で兄はこの曲を一緒に歌ってくれないかと言った。ちょっとした軽いノリで、しょうがないなと歌ったが。
兄とカラオケに来るなんてなかったことだ。従兄弟しかいないとはいえ、男兄弟で歌うなんて照れくさかったのだが。
それに、なんだか歌のシチュエーションがピンとこなかったのだ。
正直なところセンチメンタルなこの曲はイーグルスの名曲だとしてもあまり好きではなかった。
「なに言ってんだよ」それは色んな意味でバカバカしい戯言に聞こえた。
だが、本当にこの曲をかけることになってしまった。
Desperado, why don't you come to your senses?
You been out ridin' fences for so long now
Oh, you're a hard one
I know that you got your reasons
These things that are pleasin' you
Can hurt you somehow
冗談じゃないよ、ほんとに目を覚ましてくれよ。
あなたはそんな頑固者じゃなかったでしょう。
自分を傷つけることが楽しいはずがない。
そんなことはわかっているよ。
Don't you draw the queen of diamonds, boy
She'll beat you if she's able
You know the queen of hearts is always your best bet
ダイヤのクイーンを引きたかったわけじゃない。
だけど、最初の手札がダイヤのクイーンとスウォードのキングだったら、どうすればいい?
誰だってハートのクイーンを心から求めているさ。
Now it seems to me, some fine things
Have been laid upon your table
But you only want the ones that you can't get
手持ちの札がそこそこでも、無理な手を使っても賭けなければ
あなたの欲しいものは手に入らなかった。
やっと掴んだ幸せを守りたかっただろうし、
あなたにはあなたのプライドがあった。
Desperado, oh, you ain't gettin' no younger
Your pain and your hunger, they're drivin' you home
And freedom, oh freedom well, that's just some people talkin'
You're prisoner walking through this world all alone
もう若くはない。
けれど、ジリジリと時間切れが迫る。
そんな中で一人で闘うことになってしまった。
Don't your feet get cold in the winter time?
The sky won't snow and the sun won't shine
It's hard to tell the night time from the day
You're losin' all your highs and lows
Ain't it funny how the feeling goes away?
昼夜が逆転してしまえば、気もおかしくなるさ。
賭けに負ければ、どうしていいかわからないよね。
Desperado, why don't you come to your senses?
Come down from your fences, open the gate
It may be rainin', but there's a rainbow above you
You better let somebody love you, before it's too late
ついに向こうの扉を選んじゃったね。
でも、もう充分だよ。
それで充分だって許されたってことさ。
冷たい雨が寒かっただろうね。
あなたは皆に愛されていたよ。
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